[13日目] 3D CADと工業デザインのプロセスの変遷みたいな話

しんじろ しんじろ

こんにちはCerevoデザインエンジニアのしんじろです、LiveShell 2の外装デザイン&設計を担当しました。

大手や有名企業出身者が多い弊社に於いてはちょっと異質な経験を積んでたりする叩き上げの工業デザイナーです、前職ではTE○GA Vacuumなんとかのデザインをやってたりしていました。

今日は近年の工業デザイン&エンジニアリングに欠かせないソフトウェア、3D CADのお話をしたいと思います。
 


 
自分が社会人になった1998年位というのはちょうどエンジニアリング技術が過渡期にありまして、ドラフターでの手描き図面やら2D CADが混在し、そして3Dが世に出始めた時でした。

自分は今までMicroCADAM→AutoCAD→SolidWorks→CoCreateModeling→Fusion360と経験し、その他にもスポットでProEngineerやらCATIAやら、NXやらも触る機会がありました。

まず、それから約20年経ってその勢力図はどうなったかという話をしたいと思います。
 
 

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(参考)ヤンマミュージアムに展示しているケン・オクヤマのデザインスケッチ

グラフィックデザイナーやWebデザイナーさんたちは概ねAdobe社のソフトに一本化されてるような状態かと思いますが、3D CAD界に関してはそうも行きません、なぜならそれぞれの親会社が大手が多く、ユーザーも満遍なく散りばめられており、一度馴染んでしまったソフトはなかなか切り替えにくいからです。

その中でも多くのユーザーを抱えているのが、自動車業界を中心にユーザーが多いダッソー・システムズ社のCATIA、シーメンスPLMソフトウェアのNXや、家電業界にユーザーが多いPTC社のCreo、中小企業が中心のSolidWorks、2D CADで絶大な勢力を誇っていた、Autodesk社のInventorなどがあげられます(それぞれも別々のソフトだったものが買収等で統合されたりしてます)。

それぞれのソフトは何が違うかというと基本的なところはあまり違いはありません、細かいことでいうと用語が違ったりだとか、できることとできないことが微妙にあったり、大規模な部品構成に強かったり弱かったり・・・
一番大きいのはイニシャルコストと、保守費用でしょうか?ハイエンドと言われるCATIAやNX、Creo等は価格が高めに設定されています。

プレゼンのためのデザインスケッチを一生懸命描いて、粘土(学校で使ってた油粘土と組成が一緒だったりします)やらウレタンフォームやらを削ったり盛ったりして立体を作って検討し、それをざっと図面にし、しっかりとした図面は設計の方と相談をしながら描いてもらうというのとが以前の工業デザインの現場だったように思います。
 
 

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レンダリングソフトで作成された完成予想画(レンダリング画像)

それが、3D CADの登場と共に大きく変わりました。

なぜなら、それまでスケッチやドローイングで描いていた「後で設計の人と打ち合わせをして形を決める部分」が3D CADではほとんど存在しないということと、プレゼン用のスケッチを描く時間=3D CADでモデリングをしてレンダリング(完成予想画)を作る時間になってしまった、ということです(もちろんメリットは他にもたくさんあります)。

かつて工業デザイナーは魅力あるスケッチを描くこともスキル(自動車業界等は今でもそうなのですが)だったのですが、そんな時間があったらさっさとモデリングしてレンダリングソフトで完成予想画を作ってしまったほうがいいということになってしまったのです。
 

  • かつてのデザインプロセス
    手描きスケッチで形状検討→プレゼン用レンダリング(スケッチ)作成→2D図面(超簡単な図面)→設計者が図面起こす
  • 3DCAD以後
    手描き等で検討→3D CADでモデリング→レンダラーでレンダリング→設計者にデータ渡し

 
一見プロセス自体にあまり変化がないように見えますが、その中身が大きく違います。
製品のレンダリングを作る作業の時間がかつてはマーカーやらパステルやら、はたまたAdobeのIllustratorやPhotoshopを使って丸々1日かかっていたような作業でしたが、レンダラーソフトでレンダリングは1時間もかからず終わってたりします。

デザイナーのいい加減な図面から設計図面に起こす作業もかなりの時間を要しましたが、3D CAD以後はそのままデータを渡すことができます。そのデータから3Dプリンターなどで試作をつくることもできます(そのままじゃダメな場合ももちろんあります)。

なので、デザイナーと設計者、今までは別々の部署や人員がやっていたケースが多いですがそれほど人員を割けない小さなメーカー等はある程度デザインセンスのいい設計者が1人居ればなんとなかってしまうとも言えます(ちょっと極論ですが・・・)

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部品構成の画像も簡単に作れる。

私が担当したLiveShell 2もかつてのデザインプロセスからはかなりショートカットしたプロセスを踏んでいます。

手描きで頭に浮かんだ形状を軽くスケッチして、良さそうなら3D CADでモデリングし、レンダリングソフトで様子を見て検討する、そんなアイデアを何通りか検討し、決定したら3Dプリンタで試作、部品との嵌合を見る。
大手メーカーではほとんどないことですが、デザインと設計者が同一なのです。設計、製造の都合上デザイン変更を余儀なくされる場合にすぐさまデザインエンジニアの裁量で変更できるのがこの体制のメリットです。

 

スタートアップが選ぶCAD

これからハードウェアで起業を目指す人はCADの選定は避けて通れない部分もあるかと思います。
いきなりハイエンドのソフトを導入しようとすると100万円以上のコストがかかります、お金のないスタートアップでそれは厳しい。

低コストで導入できる3D CADとしてRhinoceros(これをCADと呼ぶのはちょっと語弊もありますが)やAutodesk Fusion360があります。Rhinocerosなら15万円以下から、フュージョン系なら年間4万円以下から使うことができます。
どちらもミドルレンジクラスのソフトと比べると使いにくい点、不便な点もありますが、とりあえず立体を起すという意味ではコストパフォーマンスの高いソフトと言えます。Fusion360はスタートアップならば無料で使える点も魅力に思います。

今までいろんなソフトを使ってきた筆者としては言いたいことは山程あるのですが、まずはこれらの気軽に導入できるCADを触っておくと後々ほかのソフトに移行しても糧になると思います。