「モノの出入国手続き」を担う海外物流の苦労[12日目]


本記事は、Cerevoスタッフが業務や趣味について思うままに書き綴るアドベントカレンダー企画「Cerevo アドベントTechBlog 2017」の第11日目です。

Cerevo アドベントTechBlog 2017
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急募、どこでもドアを数日内で完成できる方。

冗談のように聞こえますが、これはほぼ毎週のように私が心の中で叫んでいる事です。どこでもドアがあれば、いろんなことがかなりストレスフリーになります。特に海外に・海外からモノを動かす時のストレスが軽減できます。

海外営業のアダチです。営業として入社しましたが、Cerevoのプロダクトを確実に海外のお客様にお届けできるよう、入社と同時に輸出入のこと、物流のことも担当しています。

海外が関係している物流は面倒です。何がどう面倒なのか簡単に説明をすると、海外旅行に行く時、出国手続きをして、到着したらその国の入国審査を経て、はれてその国に入れて旅行ができますよね? 私のやっていることは、これと似ています。「モノを毎度毎度出国手続きし、送り入れる国の入国審査が通る手続きをして、最終目的地に届ける」です。

届ける国が違うと、そのモノ(一生懸命、時間と労力とお金をかけて開発・製品化したプロダクト)の扱い方が変わってきますので、いかにスムーズに入国できるか(モノの輸出入の場合は、税関手続き)がキーになります。

こうした手続きは、最近どんどん面倒になっています。理由はいくつかありますが、その1つはリチウムイオン電池(危険品)の事故の増加です。

事故といっても、液漏れする、とか、家にある商品に組み込まれているリチウムイオン電池から煙が出た、とかだけではありません。リチウムイオン電池を保管していた港の倉庫が爆発して、周りの設備もなにもかも吹っ飛んだ、とか、飛行機の貨物スペースに荷物として預かっていたリチウムイオン電池組み込み品の品物から発煙・発火があって緊急着陸した、といった規模の事故も発生しているのです。

なので、リチウムイオン電池が関係しているプロダクトを動かす際には、それが組み込み品なのか、商品に同梱されているのか、電池単体なのか、その電池のセル数はいくつか、電池1個の重量や出力量はいくつか、などについて確認をしないといけません。場合によっては、追加で「このリチウムイオン電池は安全です」と証明できる第三者機関が設定したテストに合格した検査結果を電池メーカーさんに出してもらう必要があったりします。

下の画像は9個のリチウムイオン電池(総重量約2キロ。両手で持てるほどの物量)単体を日本から海外に送る際の危険品輸送対応特殊梱包した状態です。中身は小さいのに箱が大きくて、空気を運ぶようなもの……。

事故が増える一方のリチウムイオン電池なので、世界的に輸送会社さんもどんどん敏感になっています。輸送会社によって設けているリチウムイオン電池関連の輸送基準や輸送方法、梱包の仕方などがまったく違います。なので事前に必ず輸送会社さんと確認をすることをお勧めします。以下は、どんどん規制が厳しくなっていくリチウムイオン電池組込み商品に関するアメリカの一例です。

Thinking about buying some “smart luggage” for your holiday travel? Think again.

CNBCさん(@cnbc)がシェアした投稿 –

「だったらリチウムイオン電池を使わないプロダクトを作ればいいじゃん!」

そう思うかもしれません。けれど製品の仕様上、バッテリーを使うことが必須となる製品も多く、さらに驚くことに輸送業界での危険品は、リチウムイオン電池以外にもたくさんあるのです。

例えば、プロダクトにゲル状のシート(熱吸収体など)を使おうと決めたとしましょう。また、ガス(昇降する機構に使われたり)が使用されている部品の採用を決めたとしましょう。このゲル状のシートやガスが入っている部品も、輸送においては危険品です。ついでにいうと、液体も危険品です。

これらの危険部品を使うと決めたらば、プロダクトの開発と並行して行わなければいけない事があります。それは、その部品メーカーさん(もしくは仕入先さん)に連絡をして、SDS (Safety Data Sheet)、もしくはMSDS (Material Safety Data Sheet) と呼ばれる書類の入手です(SDS、MSDSは日本語だと 製品安全データシート と呼ばれます)。そしてその書類に書かれている「輸送に関する項目」に明記されている条件を満たしていないと、その部品や部品が使われているプロダクトは海外には動かす事ができません。

「えー、めんどくさいから、こっそり送ればいいじゃん!」

これ、気持ちはすごくよく分かります。バレなきゃいいじゃん、な意見もあると思います。でも、輸送中にそれが発覚したらせっかく送った製品がUターンで戻ってきます。せっかく完成したプロダクトなのにお客様にお届けできなければ失注となることもあり、そうするとあてにした売上が入ってきません。製品も場合によっては廃棄処分になってしまうこともあります。また、こっそり動かそうとした事に対して役所からペナルティーが課せられる可能性もあります。

(実際、製品の書類に不備があり、せっかく送った製品が戻ってきてしまった経験が弊社にもあります。)

海外からの部品調達はどんどん簡単になっています。しかし、「この部品、仕様を満たしているし安いから採用!」と決めたその部品が実は危険品に属していて、必要な書類や証明書を出してもらえない、なんてことになったら、一からやり直しです。代わりの部品があればよいですが、無い場合はそのプロダクトそのものを見直さなければいけない状況に直面するでしょう。それは、今まで貴方が費やしてきた時間と労力は無駄だった、と言われるに等しいのです。

「なんだかよく分かんないなぁ。」「だいたい、危険品って何?」と思われた方は、ご自身が海外旅行に行く時に必ず通る「出国手続き」のゲートを思い出してください。シャンプーや化粧品、ジュース、ライターやマッチ。「持ち込む量」の制限がありますよね?モバイルバッテリーもしかり、です。空港のあの看板に書かれているモノ達は、国境をまたいで動かす時は要注意です。

こんなポスターが出国ゲート付近に貼ってあります。

「あれ? この部品って危険物になるのかな?」と頭をかすめたら、その部品メーカーのお客様窓口や、輸送会社さんに問い合わせるのが一番です。輸送にまつわる規制やルールは日進月歩で変わっています。最新かつ確実な情報については推測でなく問い合わせるのがベストです。

「なんか、メンドウな事が多いから、ハードウェアはやめようかな」

そうですね、こうした物流における煩雑さも、ハードウェアベンチャーがもう一歩大きくジャンプする機会になかなか恵まれない理由かもしれません。ですが、無い知恵しぼって、輸送会社さんとチームを組んでお客様に納品して、そして、そのお客様からフィードバックがあったり感謝されたりすると、その苦労が少しだけ報われます。

で、これを読んでいるそこの貴方、どこでもドア、いつできますか? あさってには完成しますよね??

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adachi
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