[1日目] Cerevo流ハードウェア量産術 2016年編

Kazumasa Ito Kazumasa Ito

伊藤です。Cerevo製品の製造・生産・調達関連を担当しています。

昨日、弊社代表のゆるすぎるエントリと共にアナウンスさせていただいたとおり、今年もアドベントTechBlogが始まります。

初日となる私は真面目なエントリをということで、ハードウェアスタートアップっぽいテーマにしてみました。Cerevoがハードウェアを量産するうえでのポイントは何なのかっていう話で、これからハードウェアをつくりたいっていう方の参考になればいいかなと思ってます。タイトルに『2016年編』とつけたのですが、やはり1年前とはやり方は変わっています。それもそのはず、弊社は今年だけで10製品以上を量産しており、その製品カテゴリはDOMINATOR、Tipron、7-Magic、LiveShell Xなど多岐にわたります。ってことを踏まえて、量産までのポイントを時系列的に書いていくことにします。

工場を探す

いきなりですが、これが一番重要です。品質は上流からコントロールすべきですから。最低限必要なのは、基板工場、SMT工場、金型工場、箱工場、組立工場です。あとは金属加工工場が加わればベター。これらの工場を手っ取り早く探すには、香港で年2回開催されている、Global SourcesとHong Kong Electronics Fairに行きましょう。展示会のオールスター的な位置づけで、部品工場も含めていろんな工場を一度に見ることができます。

とはいえ、これら2つの展示会は初級〜中級です。メインはConsumer Electronicsなので、特殊な工場は見つかりにくいです。弊社くらいの製品数やカテゴリになってくると、基板とか金型とかに特化した展示会に行くことも多くなります。その中でもドイツで開催されているK-show、Euro Mold、electronicaあたりはオススメです。ヨーロッパの顧客をメインにもつ中国工場が多数出展しているので、香港や中国内で探すのとは大きく会社の特徴も異なり様々な選択肢があることに気づかされます。気になる方はヨーロッパの展示会まで足を運んでみるのもいいかもです。

工場を訪れる

展示会で目をつけた工場には必ず訪問します。展示会が終わった直後がベスト。品質については工場を見ればある程度わかるので、それ以外に気にすべきポイントをまとめてみました。

基板・SMT工場
基板工場は持っている設備から実力が推測できるため、電子部品をハンドリングするSMT工場の方がより重要になってきます。そこでは必ず全ての電子部品の価格と納期を聞き出します。それを自分達で調達した場合の価格・納期と比較して、安くて早い調達方法を選択しています。これをやることで、追加オーダーの際にコストアップを要求してくる工場に対して『何の部品が上がってるんだ?』と問い詰めることができ、『じゃあCerevoから部品供給するぞ』っていう武器を使えるため交渉を有利に進めることができます。

金型工場
基本は成形工場とセットです。工場に行けば規模感はすぐにわかりますので、あとはダブルインジェクション、インサートモールド、オーバーモールドができるのか。クリーンルームはあるのか。塗装は?蒸着は?などプロダクトに応じた判断ポイントがあります。他にはどういうCavity材料がfamiliarなのかも聞いておきます。S136なのか、NAK80なのか、1.2343なのか、はたまたP20なのか、738Hなのか。

金属加工工場
この職種はすごく細分化されてます。メインがCNCのところ、Die Castingのところ、Stampingのところ、ExtrusionやForgingができるところなどなど。これもプロダクトに応じて工場を選んでます。この手の工場はなかなか展示会で見つからないので、『Die CastingはできるけどExtrusionはできない』などのケースも多く、なかなか1社だけでやりくりしていくのは厳しいです。

箱工場
これはぜひ昨年の私のTechBlogを読んでください。

組立工場
まずは安規認証(技適/CE/FCCなど)。弊社の場合、中国ローカルの認証機関を自らハンドリングしているのですが、組立工場にアレンジしてもらうのもアリ。それでも日本の認証機関を使うより大幅なコストダウンが期待できます。

次に物流。これも弊社では輸送の手配まで自社でやっているのですが、特にバッテリを搭載した製品だと中国からの輸出はとても大変です。せっかくの部品や製品の行方がわからないとか、通関できないなんてこともあります。弊社のように物流のプロがいる場合は別ですが、組立工場が普段使っているForwarderに任せるのが費用も工数も削減できるため無難。

共通しておさえておくこと
支払い方法と輸送方法をキッチリ確認します。RMBでの取引だと中国国内輸送ができても、USD取引だとFOB香港みたいなケースも多々あります。その場合は、香港で一時保管するための倉庫や、再度中国に輸送するためのAgencyの手配が必要になることもしばしば。

納期と勤務形態の確認も重要。『LTどれくらい?』と聞いて『15days』という回答をもらって会話を終了させるのは危険です。working dayなのかactual dayなのかを聞き、working dayの場合は土日に勤務しているのかまで確認します。あとは工場が24時間稼働かどうかも知っておきたいポイント。

また、『君らは普段どんな展示会に出展してるんだ?』と聞くのを忘れずに。気に入った工場が出展している展示会はアタリになるケースが多く、その後は芋づる式に新規工場開拓につなげられます。

製造・出荷に立ち会う

いよいよ試作品や量産品が完成に近づいてくると、各工場での製造や出荷に立ち会うことになります。

SMT工場は、最初の数枚のSMTが終わるタイミンングで工場に行きます。その品質を現地でしっかり確認してから量産を始めます。その間にFunction Testのやり方を工員さんに伝授します。やはり事前に資料を渡していても理解されないことが多いので、最初は一緒にやってあげると工員さんに喜ばれますし効率もあがります。

金型工場は1st Shotでの立ち会いは必須です。そこで課題をつぶして、ついでにシボも決めちゃいます。深セン近郊の金型工場が使っているtexture sample bookなるものが流通しているので、これを持っておくと話が非常にスムーズ。いわゆる『PANTONE xxxCの』みたいな会話が可能です。打合せのあとは、一緒に中華を食べれば(できれば白酒も)ベスト。ここまでくれば、sample bookをゲットするのも簡単です。

成形品や最終製品の出荷には必ず立ち会います。表面の仕上げ、傷の有無などを実際に自ら検品し、梱包方法もチェックします。自分達が実際にチェックしていない部品や製品は全ての不良品になってもおかしくない、くらいの覚悟が必要です。

出荷前にはInvoiceなどの必要書類を用意して輸送の準備を済ませておきます。そして集荷のトラックにのせるところまでを見届けて、やっと量産品の出荷となるのです。

最後に

最近、国内EMSの方や、中国工場をもつ日系EMSの方から製造サポートの提案をいただくことが多くなりました。必ず言われるのが『何か困っていることはありませんか?』。身も蓋もない言い方ですが、『苦労はしていますが、困っていることはありません』というのが率直な意見になってしまいます。悪気はないですが、本当にそうなんです。

でもいきなりそう簡単じゃないとおもいますので、TechBlogなどを通して少しずつ、これからハードウェアを作りたいとおもう人へ伝えていければとおもいます。