自前で技適を取得し、中華の安価なBluetoothモジュールを使って製品を作る方法


TechBlogをご覧のみなさん、こんばんは。Cerevoにて電気設計を担当している馬橋です。

製品に無線機能を実装するにあたり、電波の送受信を自前で設計するのはいささかハードルが高いものです。こういう場合に、Wi-FiやBluetooth、ZigBeeなどの機能があらかじめ小型基板にまとまっているモジュールを利用することで、開発を簡略化することができます。最近ではnRF51822を使ったモジュールがまるっとmbedに対応していたりと、非常に扱いやすくなりました。

一方で、海外製(特に中国)の超安価な無線モジュールでは、国内の技術適合証明(以下、略称として技適と呼ぶ)を受けていないものがほとんどです。当然ですがこれをそのまま組み込んで使うわけにはいきません。また、モジュールでさえ大きい、あるいは機能的にちょうど良いモジュールがないという場合に、電波の送受信を行なう回路を自作することになります。そういった場合、国内で電波を出して他の機器に影響がないか確認するべく、技適の取得を行う必要があります。Cerevoでは両方のケースがあり、実際に技適(工事設計認証)を取得した場面がありました。今後申請を行う方の参考になればと、手続きの流れを記載しておきます。

技適と工事設計認証

世間一般で技適というときは、工事設計認証のことをさすことが多いです。回路図や工場の資料(設計図)があって、その通りにつくった製品が出す電波を測ってOKなら、その通りに生産すれば同じものができて正しく電波を出してますねというものです。技術基準適合認証(=技適)だと、つくった製品だけを見て正しいかどうか判断するので1台ごとに番号がつくし、製造したものは全部通さないといけないので大変です。試験時の価格いちらんには両方載っていたりして、技適は安いからいいじゃんすげえじゃんとなりがちです。ワンメイク品や試しにつくってみたとかなら技適、量産して使うなら工事設計認証といった使い分けでしょうか。

認証に必要なもの

  • 各種書類
  • テストパターンを送信できるモード
  • 認証費用

これらを用意し、登録証明機関へ試験を依頼します。電波の強さ等をいろいろ測定した結果、問題ないとなれば番号を発行してくれます。
申請にかかる費用は機関によってまちまちですが、だいたいどこもサイトにて公開しています。日本電波法認証ラボラトリーは他と比べてかなり安かったし、非常に親切だったのでおすすめです。

各種書類について

  1. 工事設計認証申込書
  2. 申し込み設備の概要
  3. 工事設計書
  4. 無線設備系統図(ブロック図)
  5. 部品表
  6. 部品表に対応したデータシート
  7. 部品配置図
  8. 外観図
  9. アンテナパターン
  10. 技適マークのラベル図
  11. 製造工場のISO9001認定証書
  12. 容易に部品を変えられないことを示す資料
  13. 識別符号を送信していることを示すエビデンス
  14. 最終製品の資料
  15. 試験用サンプル

1〜3は機関がテンプレートを持っていると思います。Cerevoの業務で申請した際は基本的にいただいたテンプレートに穴埋めでした。

4はモジュールの中にどんな部品が入っていて、どんな連携で動作しているのか程度の資料があればOKです。ブロック図レベルで十分です。

5/6は、実際にBOMリストを提出し、CR部品以外は全て対応するデータシートが必要です。クリスタルも必要なので、中国の適当なインディーズメーカーを使ってしまうと苦労するかもしれません。

8は表面写真です。各種方向から撮った写真に加え、シールドを使う場合はシールドがないもの(基板上の部品が見える状態)も求められます。

9は、アンテナからどの方向にどのくらい電波が飛ばせるかを示した図です。既存の完成品モジュールなど、あらかじめ測定したものがあればそれを添付するだけでOKですが、自作しているなどで資料がない場合は、申請の前に電波暗室で測定しておくことが必要になります。こういった測定も含めて申請を実施してくれる機関もありますので、完全に独自実装となる場合の申請はこういった機関に依頼するのも方法のひとつです。

10は、製品のどこにどのサイズで技適マークと番号を書き込むかについて、図とサイズをそれぞれ書いて提出します。マークのみ最低限の大きさ制限がありますのでご注意ください。

11は、製造時にばらつきがないので、できたモジュールも電波出力のばらつきがないことを示すために提出します。なくても大丈夫らしいですが費用がちょっとだけ上がるのと、他に何か必要になるものが増えるかもしれません。中国製Bluetoothモジュールを申請した際、モジュールの製造工場からISO9001の証書は出てきたものの、証書の適用範囲に無線設備がないということで、工場の品管マネージャーによる「ダイジョーブデス」というサインつきの書類が必要になりました。

12は、改造されないので電波出力が増えることはないと示せればOKです。シールドつきのモジュールだと、そのシールドがそのままコレになるのでスルーです。シールドがない場合、製品に組み込んで使用し、またそれが容易に分解できないなどの証明(筐体の構造図など)が必要になると考えられますし、シールドのないままブレイクアウトボードとして…のような使用方法も難しいと考えます。

10_外観写真s
これがシールドです

13は、BluetoothやWiFiで、自身のアドレスがきちんと見えることを示している資料です。ペアリングの際などのスクリーンショットで十分です。

アドレスが表示されているようす
アドレスが表示されているようす

ちなみにこれは、Appleが配布しているBluetooth Explorerを使用した際のスクリーンショットです。Hardware IO Tools for Xcodeという開発用アプリのセットに含まれています。これ以外にも、Class of Deviceや対応しているプロファイルを確認できたりと、大変便利な機能が実装されています。

14は、モジュールを積む製品の資料です。申請後にいろいろ使えそうでも、とりあえず直近で使う製品の資料を添付すればOKです。

15は、実際に試験に使用する本体となります。試験時に電源電圧を±10%くらい上下させるので、安定化電源に挿せるよう電源線をのばしておく必要があります。また、パターンアンテナは根元でカットし、そこにSMAコネクタをできるだけ短くハンダ付けします。アンテナから出る電波を全て機器で計測できるようにするためです。ひとつあればOKです。

製品の選定について

Wi-FiやBluetoothの完成品モジュールをAlibaba等で調達し、技適を通して使用する場合、

  1. FCCの認証がとれているものを選ぶ
  2. アンテナ以外の部品がシールドで覆われているものを選ぶ

を最低限注意して探します。

1について、(電波監理のほうの)FCC認証が通っている場合、電波そのものの基準はFCCと技適であまりかわらないため、国内でも認証が取りやすい可能性が高いです。また、そのために準備した資料はほとんどそのまま技適の申請に使えます。調子のいい会社だとホイホイ資料を出してくれますが、そうでないときはこっちでなんとかするか、素直に取得を依頼しましょう。海外の機関でも日本国内の技適申請を出せるものがありますが、中国にはないので、その載っている箇所か国内の機関でやってもらうことになると思います。

FCCは適当な番号をふってたりしないかどうか、きちんとFCCのサイトで検索をしておくとよいです。Alibabaのチャットでは、「ページにFCCって書いてあるけど番号ある?」ときくと返事がなくなることもあります。その場合は当該モジュール業者がFCC番号取っていないのに取っていると嘘をいっている可能性が高いので、避けましょう。

テストパターンについて

Bluetooth(特にBLE)モジュールで買う場合だと、基本的にチップメーカーはCSRかNordicかTIくらいになる場合が多いでしょう。CSRの場合はPCから制御するテストモードがもともと入っていて、技適で必要になるパターンもあらかじめ実装されています。Bluetoothだと100MHzある周波数帯のなかをポンポン切り替えて電波を出すので、その様子が見えるテストパターンが求められます。

FCCの認証済みモジュールには、FCC用テストパターンがあらかじめ実装されているものがありますが、技適の試験ではこれは使えません。FCCでの試験時に出力する電波は何かしら任意の周波数のみにデータを載せている様子を測っています。技適の試験ではBluetoothが実際に使われる際の電波の飛ばし方を測るため、上記にあるような電波を切り替え続ける方式(ホッピング)のテストパターンを出せることが条件となります。

認証番号の付与について

ある程度資料がまとまって電波の測定も終わると、証明機関が仮の番号を発行し、その番号をもとに総務省に申請を行います。基本的に問題なければそのままその番号が認証番号になりますが、もしはねられると番号が変わったりするので、量産前に余裕をもって申請するようにしましょう。試験→仮番号発行→総務省の証明書発行まではあまり時間はかかりません。2週間くらいでしょうか。2か月くらい後には総務省のサイトで検索できるようになります。

番号を書き込む場所について

モジュールなど、電波を出す部品そのものに表示させます。モジュールが製品の中に入っているので、ちゃんと技適を通したことがわかるように製品筐体やパッケージに書く場合、モジュールそのものに書いたうえで外にも書くことはOKです。外にだけ書くのは「その製品そのものが技適を通したようにみえる」のでNGです。

試験機関について

日本電波法認証ラボラトリーはふつうに民家でした。玄関で靴を脱いでスリッパに履き替えて案内された試験ルームが畳。試験台はタンスでした。電波暗室でもなかったので、本当にこれで大丈夫なんだろうかと心配になりましたが、測定を進めるうちに「きちんと試験機器を使って正しい計測ができること」が重要なんだろうと気付き、入れ物ばかり気にしていた自分の経験のなさに申し訳なくなりました。窓の外(1階だった)にはネコがうろうろしていて、スタッフのかたがときおり相手をしてあげないとネコの気が済まないということもありました。

さいごに

技適申請はめんどうでいろんな意味で壁だと感じていました。が、実際に申請を通すための準備を整えると、自分たちが利用する製品が本当に安全なのかとか、他の機器に迷惑をかけずにユーザーに心配なく使ってもらうための仕組みのひとつとわかり、「総務省の気持ちはわかります」くらいまで近くなった感じはありました。費用や手間でホイホイと申請できるものではないですが、機会があればやってみるのもよいと思います。趣味で無線モジュールを買うときは「多少お値段がはるのも仕方ないな」と納得して購入します。