モバイル機器開発Tips ~パワーマネージメント その2~

m_suzuki m_suzuki

こんにちは、Cerevoの鈴木です。
今回はパワーマネージメントを支えるハードウェアということで電源回路を扱ってみます。
実際にどんな電源回路を選定すべきかにフォーカスしたいと思います。
と言っても、そんなに電気回路の知識が必要ない程度で紹介しますので、ご安心をw

電源回路の基本の基本

よく使用される電源回路はDC/DCコンバータという回路です。
この回路を使うことで、例えばリチウムイオンバッテリの電圧である+3.7Vから内部回路の動作に必要な各種電圧を生成するわけです。
DC/DCコンバータの実際の動作としては電力変換を行うのですが、残念ながら100%変換されるわけじゃありません。
性能としては変換時の「効率」が重要になります。ちなみに変換できなかった電力は…熱に変換されますw
では、実際の回路を見てみます。

DM355EVMの電源回路

実際に自分たちが使用しているCPUであるDM355に関する例を紹介してみます。
まずはDM355の評価ボードであるDM355EVMを見てみます。
DM355EVMの回路図は http://c6000.spectrumdigital.com/evmdm355/reve/files/EVMDM355_Schematics_RevE.pdf からDLできます。
P.25-26がDM355の電源回路部分になります。使用しているチップは TPS54310 ですね。
このチップのデータシート http://focus.tij.co.jp/jp/lit/ds/symlink/tps54310.pdf をちょっと見てみます。
まずはP.1にある「効率 対 負荷電流」のグラフを見てみます。
内部回路、この場合はDM355に対して、出力電圧+3.3Vで1Aの電流が流れた場合(つまりDM355に3.3Wの電力を供給した場合)に約93%ぐらいの効率であることが読み取れます。なかなか優秀ですね。
でも、DM355は省電力モードのあるCPUです。
例えば、省電力モードになって+3.3Vで1mAの負荷電流となった(つまりDM355に3.3mWの電力だけを供給することでよくなった)場合に、効率はどうなるか…もう少しデータシートを読み漁ってみましょう。
P.10に特性グラフが出てきました。図12に注目してください。
何と、負荷電流が200mAぐらいのところを境にして、急激に効率が65%程度まで低下しているじゃないですか!
この回路では省電力モード時に約35%の電力が電源チップで熱となって消費されてしまいます。
というか、このEVMでは残念ながら省電力モードの評価や実験はできないですねw

Leopard Boardの電源回路

DM355が載っているボードとして、最近一部で話題のLeopard Boardがあります。
このボードはカメラ付きで$99と評価ボードとしては破格の価格のボードです。
早速、回路図を見てみましょう。回路図は http://www.leopardboard.org/uploads/DM355_LEOPARD_BOARD.pdf からDLできます。
P.13が電源回路になります。Leopard BoardではDM355EVMとは違って、電源統合チップ TPS65053 が使用されていますね。どうりで安いわけですね(ぉ
さてさて、どんな性能でしょうか…データシート http://focus.tij.co.jp/jp/lit/ds/symlink/tps65053.pdf を見てみましょう。
データシートのP.1には大体そのチップのFEATUREが書いてありますが、いきなり “Up To 95% Efficiency” と書いてありますね。期待できそうです。
問題は省電力モードになったとき、つまり低負荷時の効率です。
P.7のFigure1, Figure2に注目です。
どちらも効率と負荷電流の関係を表していますが、Figure1のほうが負荷電流が0.001A=1mAのときでも効率が90%程度を維持しています。
違いは何かというと、Figure1が”PWM/PFM Mode”なのに対して、Figure2が”PWM Mode”オンリーなことです。
このモードをどう切り替えるか、それもデータシートに書いてあります。
P.5に TPS65053 の各ピン毎の機能が “TERMINAL FUNCTIONS” にまとめられていますが、その中のMODEピンが該当します。

Select between Power Save Mode and forced PWM Mode for DCDC1 and DCDC2.
In Power Save Mode, PFM is used at light loads, PWM for higher loads.
If PIN is set to high level, forced PWM Mode is selected.
If Pin has low level, then the device operates in Power Save Mode.

つまり、通常時はMODEピンをHighにしておいて、DM355が省電力モードになるときにはLowにしてあげるとバッテリが効率良く使えますね。
電源回路はこうじゃないといけないです。

電源回路のポイントとまとめ

バッテリ動作するようなモバイル機器の電源回路は、とにかく高効率であることが重要です。
しかも、ON/OFFできるだけじゃなく、電源回路自体がパワーセーブモードを持つものじゃないと長生きできません。
今回はDM355の省電力モードと絡めて電源回路を紹介しましたが、Linuxが動作しているようなCPUが実際に省電力モードになるまでの動作に興味をもたれる方もいると思いますので、次回はその辺の具体例を紹介する予定です。