[23日目] ドミネーター開発を事例としたオタク中心設計 序

Kagami Shota Kagami Shota

こんばんてん。プロダクトマネージャーの加々見です。秋葉系インタラクションデザインと称して、こんなVJソフトこんな楽器をつくっていたら、いつ間にか聖地アッキハバラー\(^o^)/で働らくことになって願ったりかなったり。Cerevoアドベントカレンダー23日目は、そんなアキバ系なアニメにまつわる話から、今夜もスタートアップ!

今年も心に残るアニメに出会えましたか?

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著者が今年購入したBlu-ray抜粋

今期のテレビアニメは、残念ながらあまり追えてなかったのですが、「すべてがFになる-THE PERFECT INSIDER-」は毎週見ていました。本編もOP/ED楽曲もとても好みなのですが、特に、OPやEDの映像が、ミュージックビデオのような作り込みで非常に見応えがありました。

とりわけEDの最後のカット、ライフゲームアルゴリズムのプログラムによって生成されたデジタルな動きのクローズアップから、徐々にカメラが引いていき、それらが3次元かつ有機的な配置になって、最終的には真賀田四季の顔になっていくシークエンスがすばらしい出来でした。彼女がつくったプログラムから、謎めいた天才プログラマーである彼女の輪郭が露わになっていくお話の構造とリンクしているようで、心に残っています。

ところで「すべてがFになる-THE PERFECT INSIDER-」は、(アニメファンならご存知でしょうが)フジテレビのノイタミナというアニメーションの放映枠で放送されています。そう、ノイタミナといえば、劇場映画版も制作された人気シリーズ「PSYCHO-PASS サイコパス」がありますよね?

もうお分かりかと思いますが、われわれCerevoでは、サイコパスの劇中に登場する銃状のデバイス「ドミネーター」のスマート・トイを開発しています。今回の本題は、そのドミネーターの開発手法をお話したいと思います。

ドミネーターを、どんな人に向けて開発をするか

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宜野座 監視官コスの弊社社長

弊社は秋葉原にオフィスがあるという事も幸いして、社長をはじめ社員の半数以上が何がしかのオタクです。

ドミネーターの開発に関しては、「オタクが自分の好きな商品をつくる」という、一見喜ばしい事のような状況ではありますが、オタクといっても十人十色。その状況が逆に「おれ・私が思うドミネーター・シビュラシステム」をぶつけあう事になってしまい、エリアストレスの上昇、色相判定の濁り、サイコハザードによる開発停滞、となってしまう懸念がありました。

そこで、自身がオタクとして、製品開発に愛情を込めつつも、客観的にそして素早く商品を設計をするために、「どんなオタクに向けてつくるか?」を決める事にしました。名付けて「オタク中心設計(OTAKU-Centered Design)」です。

オタク中心設計(OTAKU-Centered Design) – 三人のオタク

オタク中心設計を簡単に説明すると。具体的にどんな人が、どういう状況で、商品をどういう風に使うという事を考え(OJM: OTAKU Journey Map)、その人物像(オタクペルソナ)を中心に据えて設計をする事です。今回は「三人のオタク」を想定して設計をする事にします。

場所 使い方 モード モード内容
1.サイコパス好き 自宅・友人宅 家族や友人の犯罪係数を測定 Execution Mode 犯罪係数の測定、写真撮影
2.SFアニメファン & 日髙さんファン 自宅 一人で鑑賞 Basic Mode / Sound Test ドミネーターの変形・サウンドをじっくり楽しめる
3.コスプレイヤー コスプレイベント 手に持って撮影・友人とあわせ撮影 Basic Mode 任意のタイミングでパラライザー・エリミネーター変形ができる

※・・・実際の開発では、より詳細の情報を検討していますが、説明のために単純化しています。これらのユーザーは、特定の誰かという訳ではありません。とはいえ実際に友人や開発メンバー以外のオタク同僚などにインタビューをする事で、現実離れしすぎないユーザーを想定しています。

この表をつくることにより、ユーザーがとりうる行動が可視化され、議論がスムーズになりました。例を挙げてみます。
表を眺めながら考えると、2や3のユーザーは、指定したタイミングで「パラライザー」と「エリミネーター」の変形を楽しみたいという欲求が想定されます。3のコスプレイヤーの方々であれば、自分の思いどおりに変形をおこなって、写真に撮ったり撮られたりを楽しむと考えられますし、2の方々であれば、家に好きな状態で飾ったり、変形するさまを鑑賞する姿が見えてきます。

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開発中のドミネーター連動アプリの画面(ドミネーターのモードを、アプリから切り替えます)

開発初期段階では、「劇中同様に犯罪係数を測定して楽しむモード(Execution Mode)」 だけを実装する予定でした。Execution Modeでは、犯罪係数の測定結果が300を超えないと変形しません。それでは2と3のユーザーは不満を持ってしまうのではないでしょうか。そのため、「Basic Mode」という、好きなタイミングで変形ができるモードを追加することになりました。
また日髙のり子さんファンの方なら、音声だけじっくり聞きたいだろうという想定の元、サウンドテストモードのアイデアも出て実際の仕様に反映されています。

(更に、これらのユーザーが、もっとドミネーターを楽しめるモードも検討しております。お楽しみに。)

この表があることにより、前述したような、単なる機能の選定に役立つだけでなく、ドミネーター本体の設計や個装箱の意匠、全体の重さ、電池の容量、LEDやセンサーの数や配置、試験の条件、連動するシビュラアプリのユーザーインターフェイスのデザインや説明文等々、商品に関する多岐にわたる判断や、議論がしやすくなりました。

もちろん全てこの表を元に決められないこともあります。その場合は、サイコパス愛を持って議論をしつつ、煮詰まってしまったら、客観的に、想定したユーザーである3人のオタクが喜ぶかを考える……このようにして、すばやく検討し開発をおこなっています。

ただし、弊社として、これらのユーザー層に当てはまらない方にも、ドミネーターを是非とも楽しんでいただきたいと考えています。このオタク中心設計という考え方は、あくまで、ベンチャー企業がスピード感のある開発をするための手法、また、オタク達が自我を保ちつつ、かつ客観的にオタク向けの商品開発をする手立てのひとつであると思っていただければと思います。

まとめ

「オタク中心設計(OTAKU-Centered Design)」と称して、オタクどうしの社員が色相を濁らせることなく、素早く開発を進めるために、ユーザー層の想定から、機能仕様の検討までの手法を、ドミネーターの開発事例を元に簡単に説明しました。この記事を書くにあたり、知人のNC帝國 @MikiyaSSK 氏に編集協力を頂きました。ありがとうございました。

※・・・オタク中心設計の名前の元ネタは、「ユーザー中心設計(人間中心設計)」です。そちらはより客観的に詳細に製品仕様を決める手法となっています。興味を持った方は「ユーザー中心設計(人間中心設計)」「UXデザイン(ユーザーエクスペリエンスデザイン)」といったキーワードで検索してみてください。